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20世紀のはじめごろ、フランスのパリで画家のパブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックらによって生み出された新しい芸術表現です。
キュビズムは「立方体=キューブ」がその名の由来になっている通り、これまでの西洋美術で当たり前だった「遠近法」や1つの視点から描くルールをまったく覆した試みでした。
複数の視点から見たイメージを幾何学的に変化させ、再構築して1つに集約することで、抽象的な表現をあらわすものです。
人物や日常のものを視覚的な世界に依らず幾何学的に捉える絵画様式は、ルネサンス以降における大きな美術改革と言われました。
キュビズムの登場以降、絵画の描き方やテーマの選ばれ方は大きく変化し、近代の抽象美術につながっています。
キュビズムが生まれた革命的な作品として、ピカソの「アヴィニヨンの娘たち」が挙げられますが、それ以前にもキュビズムの起源はありました。ポール・セザンヌの後期作品です。
セザンヌは「自然を円筒形、円錐形、球体として捉える」という理念を持っており、後にジョルジュ・ブラックの風景画やピカソの作品に影響を与えたと言われています。
セザンヌのように、対象を分析して解体し、抽象的な形で再構成する技法は「分析的キュビズム」や「セザンヌ的キュビズム」とも呼ばれます。
キュビズムの特徴は、対象物を幾何学的な形に分解して再構築し、多角的な視点から描くものです。幾何学的にデフォルメされた非現実的な人物や動物が描かれるため、革新的過ぎて非常に難しく解読が困難な作品も多くあります。
当初の目的は、印象派以降に失われた絵画の彫塑さを取り戻すことでしたが、開かれた表現として評価されてからは、現代美術の土台とも言える様式になっていきました。
キュビズムの代表としてまず挙げられる画家がピカソです。「アヴィニヨンの娘たち」でキュビズムを打ち出し、以降の「ゲルニカ」もキュビズム作品として世界的に知られました。
ジョルジュ・ブラックの「ギターを持つ男」もキュビズムの代表作です。タイトルを見なければ、絵の内容が分からないほどテーマが幾何学的に分解された作品ですが、ブラックは複数の視点から見たオブジェの違いや光の効果など、視点に関する研究を深めてキュビズムを発展させていった画家のひとりでした。