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大学や学科にもよりますが、美大受験には実技もあります。そのため、実技に必要な道具選びも重要です。予備知識のないまま画材店に行き、店員に進められるまま高価な画材を購入してしまい、結局受験では使えなかった…という苦い経験をした先輩たちもいるようです。
ここでは、美大受験生が良く使う道具やおすすめの画材についてご紹介します。
デッサンの際に画用紙の下に敷く画板のこと。基本のサイズは「木炭紙サイズ」と呼ばれる53cm×68cmです。
HBやB、2Bの鉛筆は子供の頃から使うので馴染みも深いですが、デッサンでは6H〜6Bの鉛筆を用途に応じて使い分けます。複数の鉛筆を用いることで、質感や立体感、陰影を表現するのです。
鉛筆にはステッドラーやユニなど、いろいろなメーカーのものがあるので、試してみて自分が描きやすいものを選ぶと良いでしょう。
鉛筆で描いた上を擦ったり押し付けたりして濃淡やぼかしを入れる、細部を消すといった使い方をします。
画面をきれいにしたいときやエッジをつけたいときに使います。
鉛筆を削るための道具です。思い通りの細さや角度に削れるようになるには、練習が必要です。
木炭や鉛筆、パステルなど、粉状の画材で描いた後、画面に吹き付けて画材を定着させます。
黒のフレームにグリッド線が引かれた透明な窓がついているもので、モチーフの形を取ったり、構図を確認したりするために使います。
鉛筆や木炭で描いた上から擦ったり押さえたりして使います。
押さえたり叩いたり、拭き取ったりして使います。
モチーフの寸法を計測するために使います。
絵具にはアクリル絵具や透明水彩、ガッシュなどがあります。筆の種類や毛の素材もさまざまなものがあります。最終的には自分の使いやすいものや、表現に合うものを使うと良いでしょう。
筆の種類には、彩色筆や平筆、丸筆などがあります。彩色筆は彩色表現の自由度が高いため、水彩画はもちろん、デザインの分野でも使われています。平筆は広い画面を均一に塗るときや、シャープな輪郭を塗るときなどに便利です。丸筆には毛の材質や太さもいろいろあり、特に水彩画で多く使われる筆です。
そのほか、絵具を練ったり削ったりするときに使うペインティングナイフや、冊子状になっている使い捨ての紙パレット、絵具に水を含ませたり筆を洗ったりするためのバケツ、雑巾なども使います。
油絵の代表的な筆の材質は、豚毛です。ただし筆跡を残したくない場合は、別の種類の筆を使うと良いでしょう。筆は作品を仕上げるほどに摩耗して毛が短くなっていきます。消耗品なので、ダメになったら新しいものへ買い替えが必要です。
初心者には基本の12色入りの絵具セットがおすすめです。
絵の具には、コバルトブルーヒューやバーミリオンヒューなどのように、カラー名の後に「ヒュー」という言葉がつけられているものがあります。この「ヒュー」は、本来の色に“似せて作った色”という意味です。「ヒュー」がつくコバルトブルーは顔料が高価なため、安価な材料で本物の色を再現することで、リーズナブルな価格で提供できているのです。ただ本物の色は発色もきれいなので、必要に応じて試してみると良いでしょう。
速乾性の高いオイルですが、乾くまでに2日程度かかるため、テレピンのような揮発性の溶液を混ぜて使います。
筆についた絵具を落とす液です。油絵具は水で洗っても全く落ちないため、筆洗液でまず油を落とす作業が必要です。その後、水で洗います。筆を長持ちさせるためにも、毎回きれいに洗うことが大切です。
油絵は木製パレットを使って描くイメージがありますが、美術予備校では2日ペースで次の課題へ移ることが多く、拭き取る手間のかかる木製パレットを使っている学生はあまりいません。受験の場合は特に効率が悪いため、めくって捨てるだけの紙パレットを使う学生がほとんどです。
絵の具を混ぜ合わせたり、画面上で色を混ぜたり、盛りつけたりという用途で使われる道具です。絵を描く道具として使うよりは、絵の具を混ぜる道具として使う人の方が多いようです。絵の具を混ぜる際に重宝するので、一本は持っておくと良いでしょう。
画溶液を入れておく小さな容器です。裏についているクリップでパレットにとめて使いますが、コンパクトにできているため使いにくく、実際使わないという学生も多いようです。代用品としては、丸い小皿がおすすめです。
油絵で使う筆には平筆や丸筆、扇型筆などの形がありますが、さらに丸筆はラウンド、ライナー・スクリプト、平筆はフラット、アングル、フィルバート、ブライト、扇型筆はファンと細分されています。
豚毛の筆は油絵に適した道具ですが、硬さがあるため絵具を塗り重ねるときには扱いにくい筆でもあります。さまざまな絵を描く必要がある美大受験生には、軟毛の筆がおすすめです。油絵用の軟毛にも馬やたぬき、セーブル、コリンスキーなどがありますが、受験でおすすめの軟毛は「ナイロン毛」です。比較的リーズナブルで耐久性があり、アクリルと併用でき、描き味も良いといったメリットがあります。
油絵具のおすすめのメーカーは、日本製で品質も良く、一般的に使われているメーカー「ホルベイン」と「クサカベ」です。160色以上と色数も豊富ですが、慣れないうちは色を選ぶのも大変なので、基本色が揃っているセットを購入すると良いでしょう。
使用する絵具メーカーは一つに絞る必要はありません。色によって使うメーカーを決めておくと、表現の幅も広がります。ぜひ、自分の好きな絵具を見つけて、自分だけのセットを完成させましょう。
アクリル絵具は顔料と展色材でできており、顔料によって絵具の価格に差がでてきます。画材メーカーが販売しているアクリル絵具は、安いものでも価格が100均の倍以上で、色によっては数倍以上の価格がついているものもあります。発色の良い絵の具が高額になる理由の1つとして、宝石となる鉱石が顔料に使用されているからです。
たとえばフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」に描かれている青いターバンには、ウルトラマリンブルーの色が使われています。天然のウルトラマリンブルーの顔料には宝石のラピスラズリが使用されており、高価な絵の具として有名です。
一方で、100均のアクリル絵具のような安い絵の具は、価格を下げるために化学合成を使っているものもあるほか、顔料を減らして展色材を増やしていたり、炭酸カルシウムなどの体質顔料を染料で染めて顔料の代わりにしていたりするものもあります。
100均で販売されているような安い絵の具は画材メーカーの高い絵の具に比べて、顔料の品質や発色、耐光性、長期保存性などが劣る場合があるため、価格以上の品質は期待できないでしょう。
100均のアクリル絵具の最大のメリットは、やはり何といってもその安さです。遊びで楽しむ分には十分で、絵具の値段を気にせずに使用できます。
ただ、耐光性や耐久性などに不安が残るので、作品を残す目的で使用するのは注意が必要です。また、画材メーカーで販売しているアクリル絵具に比べて色数が少なく、混色した際の色もくすみがちなため、美大受験に使用するのはおすすめできません。本格的に絵を描く場面では、品質が安定していて、色数も多く、混色もしやすい画材メーカーの絵具を選ぶのが良いでしょう。
気軽に絵を描きたい場合は100均の絵具、本格的に絵を描きたい場合は画材メーカーの絵具、と目的に合わせて使い分けるのがおすすめです。