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古代ローマ帝国の美術であるローマ美術。共和制末期とコンスタンティヌス1世以前の時期の美術を指します。
ヘレニズム美術の延長であり、ギリシャ美術を古典とした模倣的な作品が多いのが特徴。ギリシャ美術へのあこがれから、ギリシャ美術の彫刻を輸入したりコピーしたりして、公共の場や自宅に飾り始めました。
もとからイタリアでエトルリア人が築いていた美術にギリシャ美術が加わり、発展してできたのがローマ美術です。彫刻や絵画は洗練されていき、少しずつローマ美術ならではの世界観も誕生します。例えば、理想的な人間の肉体ではなく、本人に似た肖像を目指すのはギリシャ美術と異なるところであり、裸体像が少なく、時代の流行を髪型などに取り入れているのも相違点です。さらに、火山の噴火により埋没してしまった古代都市ポンペイ遺跡の壁画や、壺絵などにも人間のリアルな肉体が描かれていました。
「ローマ帝国初代皇帝アウグストゥスの銅像」や「コロッセオ」、「コンスタンティヌス大帝の巨像の頭部」、「ディオニュソスの秘儀」、「ティトゥスの凱旋門」などがローマ美術の代表作です。
ローマ帝国初代皇帝アウグストゥスをモデルに作られた「ローマ帝国初代皇帝アウグストゥスの銅像」は甲冑に細かい細工が施されていて、重厚感ある仕上がりが見事なローマ美術初期の作品です。「コロッセオは」ローマ美術中期の作品で、残りの3つは帝政末期の作品です。
また、ディオニュソスの秘儀はポンペイの秘儀荘に描かれた壁画であり、「ポンペイレッド」と呼ばれる赤色が特徴的。紀元前の色彩を堪能できる作品です。「ティトゥスの凱旋門」はフランスのパリにあるエトワール凱旋門のお手本にもなりました。レリーフに凱旋式の様式が刻まれているのが特徴的な建造物です。
古代ローマで思い浮かぶのが彫刻や建造物。実際、ローマ美術に描かれた絵画は貴重で、ほとんど残っていません。彫刻では皇帝などをモデルに作られましたが、作品を手がけた作者の多くは不詳です。土木技術が発展したことで、コロッセウムなど大きな建造物も作られるようになりました。絵画では動物だけでなく、神話や自然、宗教などがモチーフとして扱われています。
神々に捧げることを目的としていたローマ美術に対し、ギリシャは皇帝や位の高い人物に捧げられました。写実的であることが求められ、歴史の一場面を切り取ったかのような彫刻が増えていきます。ギリシャ美術の特徴である体のひねりもなくなり、代わりに当時身に着けていた甲冑や鎧などを正確に描写しているのが特徴です。
そのような時代の中にあって、ローマ人はギリシャ彫刻で描かれた肉体美に憧れを持っていました。ギリシャ美術は高い人気を誇り、多くのレプリカが作られ出回ったほど。時代の変化に伴い薄れてしまった思想や美術に対する価値観がローマ人にも響いたのでしょう。
エンカウスティックは主に壁画に扱われる手法です。ろうそくを使う手法であり、溶かした光郎に顔料を混ぜ、使用します。古典壁画の代表的な技法として知られていますが、中世以降はほとんど使われなくなってしまいました。ローマ美術ではポンペイの壁画がエンカウスティックを活用した壁画として有名です。