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美大進学を考える場合、美術系高校に通う生徒は有利なのでしょうか。美大に進学するなら美術系高校出身者が有利であるように見えます。美術系以外の高校に通って美術大学に進学した有名人や著名人はいないのでしょうか。
高校の美術科とはどのようなところなのでしょうか。
高校というと日本では現在普通科が一般的ですが、工業科、商業科、音楽科など専門を深く学べる課程もあり、美術科もそのような専門課程のうちの一つということになります。専門課程というと専門のことばかり学んでいるような印象も持ちますが、専門以外のことも学んでいきます。
美術科ですと美術関連の授業に充てられる時間数は多いのですが、美術関連以外の授業も履修して修了しなければ卒業できません。英語や国語(現代文・古文・漢文)、数学と理科(化学・物理・地学・生物)、地理歴史(日本史・世界史・地理)、公民(現代社会・倫理・政治経済)、保健体育の授業もある程度満遍なく履修するように規定されています。
普通課程と比較すると当然履修に求められる要件は少ないのですが、全部から逃げるといった選択肢は採れません。美術科などの専門課程のみしかない高校もあれば、普通科や音楽科など別課程を併設している高校もあります。
学費については一般的に音楽科や美術科など美術系高校では普通科よりも高額となるケースが多いです。これは道具・資材に費用が掛かる為です。ただ、美術系高校でも私立と公立だと公立の方が学費は安いです。
その場合も学費とは別に道具や資材の購入をしなければならないことも普通課程と比べると多くなります。高校にもよりますが、美術科と他の課程が併設されている場合は他の同学年あるいは別学年の生徒と一緒に授業を受けることもあります。
体育祭や文化祭では別の課程に在籍する生徒と一緒に共同して取り組むようなことも有り、他高校のとの交流もあります。勉強以外にも部活動などを通じて他生徒との交流も図れますので、美術に関連する人たちだけで3年間を終えるということはありません。
このようなプログラムになっているのは、専門性を身に着けながらもバランスの良い人間を育てたいとの意図があるからです。
美術大学の入試では高度な知識や技術を課してきます。美術系高校では美術に関する授業が多く、技術についても着実に上がるようになっています。
3年間通って卒業時に提出される卒業課題はどれも素晴らしく、胸をうつような作品も多く見受けられます。しかし、美術大学の入試では美術系高校で学んだことをそのまま問うような問題ではなく、発展的な問題構成となっています。
美術大学の最高峰であり、美術系大学の東大とも言われる東京芸術大学には何年も浪人を重ねて入学する人も少なからずいらっしゃいます。美術予備校に何年も通ってようやく合格したというケースを頻繁に耳にします。
美術系高校で先生方が見ている観点と、美術系大学で先生方が見ている観点は若干異なります。美術系高校の先生方の多くは美術の教員免許を取得していますが、教員免許取得に求められる観点は大学の教授に求められる観点とは若干ながら異なります。
高校の教員になる為の要件は生徒のバランスの良い発達を促すことが出来ることであり、美術関連の課題を見ることのほか、生徒指導、生活指導、進路指導なども担当しなければなりません。
一方において大学の教員にはこのような要件はないのです。教授も学生の面倒を見る義務はありますが、高校から求められる生徒指導などはあまり関知することは求められておらず、研究活動に比重が置かれているのです。
高校の教員と大学の教員とは美術関連の作品に関与する時間が異なっていると考えられます。大学の教員はより深く作品を見てくるということです。
高校の美術の成績は良いのに美術系大学に合格出来ないことがあるのはこのような理由からです。高校では絶対評価で基本的には一定水準をクリアしていれば良い成績が全員に与えられますのも理由と言って良いでしょう。
美術系高校に通いながら美術予備校にも通う生徒さんがいるのもこのような理由からなのです。
美術系高校に通っていて良い成績を取っていても必ずしも良い美術系大学に合格できる訳ではありません。また、普通課程など美術系以外の課程に在籍していても現役で東京芸術大学に合格するような方もいらっしゃいます。
世界のサカモトとして有名な坂本龍一さんは進学校に通いながら東京芸術大学に合格し修士課程まで進学されています。美術系分野で活躍される著名人の何人かは進学校から美大に進学しています。
普通課程からでも美術系大学に合格することは可能です。漫画家として著名な沙村広明さんは美術予備校に通ってデッサンを学んだ後に多摩美術大学に進学されています。
沙村さんは大学より美術予備校で学んだことによって大きく描く力が上がった旨をインタビューで述べています。進学校では大学受験に向けた意識が高く、センター試験レベルの対策までなら十分行っているところもあります。
難関の美術大学に進学するには美術関連の作品が高度であるだけではダメで、最低限の教養知識も求められます。
進学校では美術を学ぶ時間は少ないので美大受験対策は十分ではありません。従って進学校に通いながら美術予備校にも通うことをお勧めします。
美術予備校ではセンター対策をしっかり行っているところがあるほか、小論文など美大受験に特化した対策も行っています。進学校で基礎力をつけながら、受験対策に特化している美術予備校で専門力をつけるという選択肢をお勧めします。
美術予備校にもいくつか種類があり、定期的に作品コンクールや作品展、研修、美術祭などのイベントを行って生徒のモチベーションアップに力を入れている美術予備校や、現役のデザイナーや芸能人を定期的に呼んで指導する美術予備校、AO入試に力を入れている美術予備校などがあります。
どの美術予備校にも特色・特徴がありますので、進学したい大学と本人の環境を考慮した上で通う美術予備校を決定すると良いのではないでしょうか。