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筑波大学の芸術専門学群は、芸術系の大学としては珍しく実技よりも学力に比重が置かれています。発想力や表現力だけでなく、それを具体化させる技術力を持ち合わせたクリエーターの育成を目指しており、卒業後は芸術分野の指導的役割を担うポジションに収まる方が多いです。
国内でも有数の国立総合大学である筑波大学には、美術やデザインについて学ぶ「芸術専門学群」という分野が設置されています。
ここの特徴はなんといっても「美術系ながら学力が非常に重視される」こと。センター試験はほぼフル受験で、8割程度は得点しなければなりません。
ただし二次試験では学力試験はなく実技一本勝負ですが、美大受験の業界では「受験で要求される実技のレベルが低い」とも言われています。学力面に自信がある人ならば、センター試験対策を徹底すれば合格が見えてくるでしょう。
専攻は4つですが、中では複数のコースに分かれており、様々な領域のアート・デザインを学ぶことができます。
中でも面白いのは「書」。絵画などは多々ありますが、美術系の観点から書道を学べる大学というのは他に例がありません(一般的には文学部系に分類され、文化や歴史などを学ぶことが多い)。
また、芸術による社会貢献を目指す「芸術支援」という分野も珍しいですね。なお、1・2年次は特に専攻を定めず3年次から各分野に分かれていくので、入学時はやりたい分野が決まっていなくても大丈夫です。
ただし、美術の実技レベルはあまり高くなく、私立や公立の上位と比べると明らかにグレードが落ちる…とのことで、画力を要求される分野ではあまり大学の評価は高くありません。
ですがデザイン系の分野では着想力、プレゼンテーション能力、工学的知識などの分野で優位に立てるため、美的センスと学力の両方が要求されるような分野ではかなり評価されているようです。
芸術理論のスペシャリストを目指すコースです。古代から現代までの時代や地域芸術を学習し、芸術におけるさまざまな問題を解明することで専門性を高めます。デザインや造形作品の制作に関わる学生たちと共に学ぶことで、芸術についての見識を深めていきます。
人生に潤いを与え、感性を豊かにする芸術を支援・応用し、社会貢献できる人材を育成します。美術・デザインの基礎はもちろん、芸術支援学概論や芸術支援学、学外演習などを探求。4年次でそれぞれの研究テーマについての卒業論文を作成します。
作家としても活動する教員が行う絵画論議をはじめ、素描実習、油画基礎実習、洋画技法演習、油画実習などを学びます。
日本画の専門家を目指す方向けのコースです。日本画特有の技法や材料の使い方を究めると共に、古典、基礎的知識を学び、高い表現力を身につけます。カリキュラムには、基礎知識を学ぶ科目や、日本画実習、素描実習、技法演習、野外風景実習などがあります。
塑造(そぞう)実習では、人物像をモチーフにモデリング、石膏技法、プラスチックでの制作実習を行います。彫刻実習では石彫と木彫に分かれ、基礎から専門分野まで実習を積み重ねていきます。
書家や研究者を目指す方向けのコースです。カリキュラムは講義科目と実習科目に分けられ、書についてのさまざまな知識と技術を習得します。
木版画や銅版画、スクリーンプリント、リトグラフなどの版画の制作を通して、基礎知識と技術を身につけ、専門家として活躍する人材を育てています。
印刷・デザイン会社、工芸、編集の分野で活躍したい方向けのコースです。形体、色彩、コンポジション、テクスチュア、発想法などさまざまな造形知識と技術を学び、専門性を究めます。
新しい造形表現を目標に構成されたカリキュラムで、発想法と技術を修得します。コンピューターを使用した作品製作、展示方法によって表情や伝わり方が変化することなどを学びます。メディアアーティスト、造形作家、美術館学芸員、教員、展示、編集デザイン、Webデザイン、展示、映像製作などの分野・職業で活躍したい方向けのコースです。
陶磁、木工、ガラスの3分野で構成されているクラフト領域。それぞれの素材について、演習や実習を行い、収納棚や椅子などの家具、照明器具、食器などのものづくりを通して、専門知識・造形力・技術を身につけます。
イラストレーション、印刷・編集デザイン、デジタルグラフィックス、タイポグラフィ、写真などを総合的に学びます。パッケージデザイン、色彩計画、サイン計画、広告デザイン、企業・団体のデザインシステム、絵本、ブックデザインなどの制作を通し、現代造形・メディア活用について学べます。
情報システムデザイン学、人間工学、デザインイノベーション論、生産システムデザイン学、感性デザイン学、デザイン解析論などの基本理論を学びます。システム設計や製品概念の設計、デザインの方法論、形態の創造などを学ぶ、デザイン演習を行っています。
インテリアをはじめ、公園や広場、街路、都市、地域、地区など、あらゆる空間を対象に空間づくり・環境づくりを総合的に学びます。
居住空間の建築において常に疑問を持ち、存在理由を意識しながら、建築設計・デザインの知識と技法を学びます。
茂木一司(美術科、教育学舎) など
教員免許(美術工芸)、学校図書館司書教諭、学芸員、
建築デザイン領域のみ:2級建築士受験資格、1級建築士受験資格(卒業後2年以上の実務が必要)
筑波大学芸術専門学群の卒業生は、主にデザイナーやプランナーとして活躍しています。就職先はゲームや玩具を製作するカプコン・コナミデジタルエンタテインメント・セガ・タイトー・タカラトミーなどです。家具や文具を作るINAXやゼブラ、カリモク家具などの大手企業にも就職している方も。他にも東芝やキャノン、スズキなどの電気機器・自動車などのメーカーに就職した卒業生や、大学の教員として働いている方もいます また、卒業後は就職以外の選択肢として、筑波大学大学院芸術専攻や東京芸術大学大学院へ進学する方も少なくありません。
筑波大学の学園祭は「雙峰祭(そうほうさい)」と呼ばれ、全国屈指の広さを誇るキャンパスを4つのエリアに分け、さまざまなイベントが企画されています。例年、来場者は3万人にも及び、多くの方が足を運ぶ学園祭です。中でも芸術専門学群の学園祭は「芸術祭」の別名を持ち、年毎にテーマを設けて運営。普段、芸術専門学群の授業が行われている体育・芸術中央棟が、芸術祭の3日間は学生たちの手により華やかに彩られます。
芸術祭が開催される体育・芸術中央棟は「南大門」とも呼ばれており、大学設立の最初期からある建物で独特の景観が目を引きます。芸術祭期間中は作品の展示だけでなく、ライブペインティングなどの企画も目白押し。とくに人気なのが、毎年恒例の「似顔絵屋さん」です。それぞれの学生が個性的なタッチ、色使いで来場者の姿を描いてくれます。また、芸術専門学群各専攻の学生が個別に相談に乗ってくれる「受験生応援企画」も人気。実際に作品を観ながら、芸専受験の対策を練るいい機会になります。デッサンなどを持ち込んで相談するのもおすすめです。
似顔絵屋さんワークショップは大人気!筑波大学なくしてつくばは語れません
似顔絵屋さんに思ったよりもたくさんの方々が並んでくれました。描いていてとても楽しかったです!
検定料:17,000円
募集定員 | 志願者数 | 受験者数 | 合格者数 | 倍率 | |
---|---|---|---|---|---|
芸術学専攻 美術専攻 構成専攻 デザイン専攻 (前期) |
47 | 171 | 記載なし | 記載なし | 3.6 |
芸術学専攻 美術専攻 構成専攻 デザイン専攻 (後期) |
15 | 216 | 記載なし | 記載なし | 14.4 |
大学入試センター | 必須科目 | 選択科目 |
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前期 | 国語、外国語から各教科200点 数学、理科から各教科100点 |
地歴・公民から1科目100点 |
合計700点 | ||
後期 | 国語、外国語から各教科200点 | 地歴・公民、数学、理科から 1科目100点 |
合計500点 |
個別学力試験 | 内容 |
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前期後期 | 実技 |
茨城県つくば市天王台1-1-1(つくばエクスプレス、つくば駅から徒歩7分)
引用元:ask京都アートスクールHP
https://www.artschool.co.jp/top/saigen/kokkou.html
モチーフは球体とアルミホイルでしょうか。球体の立体的な陰影とアルミホイルの質感が、うまく描き分けられています。球体とアルミホイルが接触する部分の反射も、しっかり表現されています。
引用元:ふなばし美術学院HP
http://funabi.ac.jp/juken/course/weekend/painting-msg.php
「筑波大学 芸術専門学群構成専攻」合格者による、構成デッサンの再現作品。ガラス・木材と質感の異なるモチーフの描きわけや重なった部分・影の表現力の高い作品です。