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愛、喜び、悲しみや苦悩、夢想など人の内面にある感情や死などの「形のないもの」を、神話や文学の登場人物といった「形あるもの」を用いて表現した芸術運動で、象徴派とも呼ばれます。
19世紀後半、主に、フランスやロシア、ベルギーなどのヨーロッパ各地で起こりました。
文学では1857年シャルル・ボードレールの「悪の華」や「象徴主義宣言」が起源とされていて、視覚芸術ではゴシック的な要素が取り入れられる傾向にあります。
象徴主義は、目には見えない精神的な世界を表現した絵画が特徴的であると同時に、「目に見える世界」を写実的に表現する写実主義や印象派に対する反発が起源にもなっています。そのため、同じ時代に「印象派」も存在していました。
これらの精神的な世界に向かった新しい表現は、後の前衛芸術にも影響を与えました。
科学が急速に発達した19世紀後半は、科学の考えを信頼する「科学万能主義」が台頭しました。
また、電気や化学、出版工業の発達により、さまざまなものが機械で大量生産できる「第二次産業革命」が起こります。鉄道や蒸気船などの画期的な輸送手段や映画や音楽などの娯楽もこの時代に多く誕生します。
それと同時に、人間の内面や精神からくる行動の謎を解明しようとした精神科医「フロイト」や「ユング」もあらわれました。
象徴主義は、このような科学の発達や産業革命による「目に見えるものや世界が第一」という時代背景と、見えない人間の内なる面への強い興味や関心から生まれた動きと言われています。
象徴主義の作品で、知らない人はいないほど有名なのが、ノルウェーの画家、エドヴァルド・ムンクの「叫び」でしょう。幼い自分が感じた死への不安や恐怖をあらわした作品と言われています。
また、オディロン・ルドンも象徴主義の画家として知られています。彼の「眼=気球」は、気球の風船部分が眼球になっている不気味な表現で、悲しみや恐怖が伝わる作品となっています。 また、愛と死をテーマに描いたグスタフ・クリムトの「接吻」も象徴主義の作品として世界的に知られています。
このように、象徴主義では写実性や正確さだけでなく、画家の人生や内面の感情などが重視されています。多様性があり、一貫性がないのも特徴的です。