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これから美術系大学の受験を目指す方が、知識を深めておくべきことのひとつに、マチエールがあります。課題としてデッサンを作成する際、効果的にマチエールを活用すれば、評価がよりアップする期待も高まります。
ここではマチエールの言葉の意味や具体的な例、実際にマチエールを表現する方法についてご紹介します。
言葉としての本来の意味は、「材料」や「物質」を意味するフランス語であり、英語の「マテリアル」に相当します。そこから転じて、アート作品、とりわけ絵画の世界では、基底材(キャンバス、画用紙など)と描画材(鉛筆や絵具など)の組み合わせによって、描かれた絵の見え方や質感、状態がどのように変化するかを指した言葉がマチエールなのです。
例えば、これまで仕上げたデッサンを見返してみて、単調に感じたり、表面が無機質でぬくもりを感じない、逆にぬめりが多くパリッと仕上がっていないと感じるようなことがある場合、それはマチエールが適切ではなかったということになります。
同じリンゴの静止画をデッサンする場合でも、用いる基底材が画用紙か、ケント紙か、はたまたコピー用紙かによって、デッサンの見え方は変わってきます。また描画材が4Bの鉛筆なのか、木炭なのか、あるいはペンなのか毛筆なのかによっても、デッサンの印象は大きく変わってくるはずです。
こうした基底材や描画材の性質の違いをしっかり計算した上で、デッサンをより魅力的に見せるために効果的に役立てるというのが、マチエールを効果的に活用するということなのです。20世紀に入ると、形と色彩と並び、絵画を構成する重要な要素であると広く認識されるようになりました。
マチエールとは画面の表面に見えている画材の状態のことであり、用いる基底材や描画材の特徴や個性によって生まれるすべての事象を指します。
例えば鉛筆や木炭の粒子が薄くかすれて残っているという場合や、水彩画で絵具が滲んでいるという状態、あるいは水墨画の濃淡などもマチエールの一種です。
別な例としては、白の油絵具を溶き油で薄めてキャンバスの下地としてローラーでまんべんなくフラットに塗ってあるという場合や、絵具を意図的に引っかいて痕を付けたり、わざと厚みを持たせて盛り付ける、あるいは絵具に砂や貝殻などを混ぜてザラザラしたような質感とするといったようなことも、すべてがマチエールなのです。
繰り返しになりますが、基底材や描画材の特徴を活かし、絵の表現により個性や奥行を持たせることが、マチエールを効果的に活用するということになります。それこそ美大入試の課題として出されるデッサンでも、より評価を高めてくれる可能性があるのです。
例えば、4B位の柔らかめの鉛筆を用いて画用紙にさっと線を引くと、ザラザラしたような質感のマチエールとなります。その線を指でこすると、鉛筆の粒子が画用紙の中に入り込んでいき、ザラザラ感のない、柔らかな感じのマチエールに変化していきます。
美大入試の課題として出される静止画のデッサンにおいても、対象物の光の当たる部分はザラつきを活かしたマチエールで。影となる部分は粒子を紙にすり込むことで、光が届いていない陰影をより効果的に表現できます。鉛筆1本でも工夫次第で、こうしたマチエールの違いを表現できるのですから、デッサンに活かさない手はありません。今からすぐ試してみて、その効果を確かめてみてください。