美術予備校の厳選比較ガイド HOME » 美大受験の攻略法 » デッサンにおける空間と
空間表現法とは

公開日: |更新日:

デッサンにおける空間と
空間表現法とは

デッサンをよりレベルアップさせるには空間を認識する能力が必要になります。空間認識能力が身につきモチーフの全体像がイメージできるようになれば、デッサンにリアリティを持たせることが可能に。より迫力のあるデッサンに仕上がるでしょう。

ここでは、デッサンにおける空間の考え方と空間表現について解説します。

空間認識能力とは

デッサンにおける「空間認識能力」とは、モチーフの全体像を頭の中でありありとイメージできる力のことです。

写真ではなく目の前にあるモチーフを描く際は、目で見るだけでなく実際に触れてみることで、表面の質感や奥行きなどの情報が得られるため、イメージを膨らませやすくなります。

空間認識能力を養うには
「見る力」が重要

デッサン力を上げるには空間認識能力が必要ですが、その空間認識能力を養うには「見る力」がポイントになります。

絵の描き方は理論で解説できますが、モチーフの見方については個人の空間認識能力に頼ることになるため、理論で説明したとしても、全員が同じように理解できるものではありません。同じ絵を見たとしても、それが立体に見える人と立体と判断できない人が存在するように、感覚の違いの話になってくるからです。

現状で空間を把握できなくても、「見る力」を養うことで立体を理解できるようになると、デッサン力は一気に上がるでしょう。

「見る力」を身につけるには、立体物に触れる機会を増やすことと、空間やモチーフの周りの空気感を意識しながらデッサンを重ねることが大切です。

空気感を意識して描く

一般的に彫刻家は立体像そのものを作ることを仕事としているため、空間認識能力が高いとされています。

彫刻家が立体像を作るときには、立体像そのものの形だけでなく、その立体像を作ることで周りにどのような空間ができるかということまで考えながら制作しています。

デッサンを行う際はモチーフだけを見るのではなく、その周りの空気感もよく観察しましょう。例えば2つのモチーフを描く場合、2つの対象物の距離感や明暗差といった、間にできる空間に目を向けてみます。

立体をつかめるとそのモチーフが持つ「スケール感」を表現できるようになり、デッサンにリアリティが生まれます。

人体モデルを描いてみる

目の前にいる人物を描こうとするとき、写真や他の立体物からは得られない「存在感」を覚えるはずです。人物はそこに存在するだけで、場の空気や空間が変わります。そのため目に見えない空気感を感じ取る練習には、有効なモチーフです。

実際にモデルを目の前にすると、緊張感を持って描くことができます。人物をデッサンする際はその時々の動きや、光によって変化する陰影などをよく観察してみましょう。

デッサンの空間の考え方

世の中に存在するもののほとんどは立体物であり、その物をモチーフとして描く絵には奥行きを感じさせるさまざまな情報が盛り込まれていなければなりません。2次元の紙の中に空間の奥行きを表現することで、3次元の世界を作り上げることが可能になります。

デッサンで空間を表現する方法はいろいろありますが、ここでは生理学と心理学の観点から、平面上に奥行きを感じさせる方法を考えてみましょう。

生理学的な要因による空間の見え方

人間は、目から脳に送られる「両眼視差」と「輻輳角」、「水晶体の厚さの調節」と「運動視差」という4つの情報によって、距離や奥行きなどを感じられると考えられています。

「両眼視差」とは、両目で対象物を見たときの、網膜像のズレのことです。人間の左右の目は離れているため、それぞれの目で見た対象物と網膜像は異なります。そのズレから脳が距離の情報を得て、私たちは奥行きを判断できているのです。

また左右の目で一つの対象物を見るには、個々の目を内側に回転させる必要があり、対象物が近くにあるほど、目の回転角度も大きくなります。この両目の視線が交わる角度を「輻輳角(ふくそうかく)」といいます。両目で物を見るとき、私たちは「両眼視差」とこの「輻輳角」の機能を使って、物との距離感を脳へ伝えているのです。

水晶体はカメラのレンズと同じ役割があり、厚みを変化させてピントを合わせてくれる機能があります。この水晶体の厚みが変わることで、脳へ奥行きや距離といった情報が送られます。

「運動視差」は、移動する際、視線を合わせた対象物より遠くにあるものは進行方向と同じ方向へ動き、手前のものは逆方向へ移動しているように見えることを指します。

目から脳へ対象物までの距離や移動方向、速度などの情報が送られることによって、私たちは距離や奥行きを判断できているのです。

心理学的な要因による空間表現法

平面上に奥行きを感じさせるにはどのような方法があるでしょう。その方法には心理学的な要因が働きます。

物の重なり

2つの対象物があり、後方にある対象物の一部が前にある対象物に遮られて見えない場合。私たちの目は単純な図形に馴染みやすいため、できるだけ図形のまとまりを簡素化して見る傾向にあります。このことを心理学では「プレグナンツの法則」と呼んでいます。物が後ろに重なっているように見えることを利用し、奥行き感を表現する方法です。

透視図法(線遠近法)

同じ幅の道路や線路などの平行線を持つものは、実際にはどこまでいってもその線が交わることはありません。しかし、立った位置から見ると、手前から奥へ行くに従って幅が狭くなり、やがて消失点へ集束するように見えます。これを平面上に表現する方法が透視図法です。

視点を一点に固定し後方へ向かう斜線軸に沿って奥行きを表現し、同じ大きさの物は視点から近い距離にあれば大きく、遠くへ行くほど小さく描きます。

大小遠近法

サイズや形が同じものは遠くにあるほど小さく見え、距離が近いほど大きく見えます。この遠近法を使って同じ大きさの対象物を小さく描くと、遠くにあるように見え、大きく描くほど近くにあると感じさせることが可能になります。

きめの勾配

近くにあるもののテクスチャーは荒く見えますが、遠くへ向かうに従って細かく見えます。例えば、草原を描く際は、手前の草や石などは大きく描きますが、遠くへ行くに従って小さく細かく描くことで奥行きを表現できます。これを「きめの勾配」といいます。

天井や床など同じような模様を、この遠近法で描く場合は、遠くへ向かうほどきめを細かく描く必要があります。

空気遠近法(大気遠近法)

山のように、遠くにある対象は大気に影響されるため、ぼんやりとして青みがかったように見えます。同時に遠くの景色ほど輪郭線は不明瞭で、対象が霞んで見えます。この大気の性質を利用した空間表現法が「空気遠近法」です。

空気遠近法でデッサンを行う際は、遠くにあるものほど形をぼかして描くことで空間の奥行きを表現します。

明暗法

対象物に光が当たってできる光の部分と、陰影の部分を描き分けることで空間を表現する方法です。この方法によって、物や人体に立体感や遠近感を与えることが可能になります。

デッサンで明暗法を使う際は対象物の形をしっかり取り、光と陰の境目にもあたりをつけることがポイントです。

上下遠近法

中国の山水画のように、画面の中で上下関係を持たせて描く空間表現法です。近くにある対象物を下に、遠くにある対象物を上に描きます。例えば雪舟の「四季山水図」のように、遠くにある山を画面の上部に、中央部には中景を描き、樹木や建物、大地は下部に描きます。

美大にいくには??マンガでわかる受験&合格への道 詳しくみる
あなたの合格をサポートできる おすすめの美術予備校を徹底比較 さっそくCHECK
美大にいくには??マンガでわかる受験&合格への道 詳しくみる あなたの合格をサポートできる おすすめの美術予備校を徹底比較 さっそくCHECK
美大にいくには??マンガでわかる受験&合格への道 詳しくみる
       

関連ページ一覧

東京藝大の合格者多数!おすすめ美術予備校5校
東京藝大の合格者多数!おすすめ美術予備校5校