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18世紀中頃~19世紀初頭にかけて、ローマを中心にはじまった芸術様式で、ロココ美術の後にヨーロッパで主流となりました。
新古典主義の「古典」とはギリシャ時代やローマ時代の美術を指していて、理性的で写真のような表現が特徴です。
16〜17世紀に生まれたバロック美術では派手な宗教表現が、18世紀初頭に流行したロココ美術では、甘美で豪華に装飾された「貴族のための」美術が主でした。派手な色彩や表現に重きを置かず、写実的なデッサンによる美しさを追求しようとはじまったのが新古典主義です。
古典的な表現が再び生まれたのには、もうひとつ理由があります。
18世紀末に古代ローマの遺跡「ポンペイ遺跡」が発掘され、当時の建築物や壁画が数多く出土されました。その影響もあって「古典的な美術をもう一度見直そう」という動きが生まれたと言われています。
1789年からはじまった「フランス革命」により、これまで絶対的な権力を握っていたフランス王政が崩壊しました。それと同時に、官能的で貴族的なロココ美術も終わりを迎えます。
フランス革命後、混乱の世に登場したのが皇帝ナポレオンです。ナポレオンがフランス皇帝に即位して以降の新古典主義は、帝国の威信を表現するような直線的で力強い表現に変化していきました。
また、ナポレオンの偉大さを誇示するような厳格で存在感を強めた作品も続々と生まれます。このような作品の背景には、ナポレオンが政治利用を目的に絵画を発注した戦略からとされています。
このように、ナポレオン統治下の特徴的な美術や建築を「アンピール様式(エンパイヤ様式・帝政様式)」とも呼びます。
新古典主義時代の芸術は、ダイナミックな表現のバロックや甘美なロココ美術に反発するように、写実的で明瞭な、リアルなデッサンの絵が多くみられました。また、ギリシャやローマ時代の表現様式を復興させようという流れから、調和や均整のとれた表現が取り入れられています。
ナポレオンの登場以降は、新古典主義を残したまま帝国の威信を誇示したアンピール様式が目立つように。重厚で威圧感の漂う表現へと変化していきました。
新古典主義の代表作と言えば、世界史の教科書にも出てくる有名な「ナポレオン像」です。正式名称は「ベルナール峠からアルプスを越えるボナパルト」で、政治活動でもナポレオンを支持していたジャック=ルイ・ダヴィッドが描きました。
また、スーパーリアリズムと言われ、緻密な肖像画を描くことで有名だったのがドミニク・アングル。彼の代表作が、絶妙にデフォルメされた構図の「グランド・オダリスク」です。当時は相当な批判を浴びましたが、時代の流れとともに評価を高め、ドミニク・アングルは新古典主義の巨匠とも呼ばれるまでになりました。