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美大は絵や彫刻を学ぶところ、と考えている方も多いですが、その他にも、デザインや建築、布地や伝統工芸など、アートが関係するあらゆるものの製法や技術を学ぶ事ができる場所。時代の変遷に合わせて学部やカリキュラムが増える事もあります。
美大・芸大には美術やデザインに関する様々な学部が設置されています。主に以下のような分野に分けられる事が多く、美術系の学部はだいたい下記のような専攻・コースが設置されています。デザイン系は学校によってかなり名称や履修内容に差があるため、自分が将来何を作りたいのか、をきちんと考えてから学部を選ぶようにしましょう。
また、学部によっては複数の分野を跨ぐような講義を受けたり、意外な分野を研究している研究室があるので、入学後は一つの分野に凝り固まらず、幅広く様々な美術・芸術に触れて視野を広げておくと、新たな発見に出会えるかもしれません。
日本画 | 岩絵具、紙、筆、墨など日本伝統の素材や技法を学び、表現します。伝統の継承だけでなく、新たな表現を生み出し創造性を伸ばします。 |
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油絵 | 油絵具でキャンパスに描く、という既存の方法はもちろん、立体、映像、パフォーマンスなどジャンルを超えて造形力や思考力を鍛えます。 |
版画 | 木、銅、アルミなどの版を使って多彩な表現を生み出します。日本古来の浮世絵から現代アートまで、表現の幅を広げていきます。 |
彫刻 | 石、金属、木、土、FRPなど身の回りのあらゆるものを加工し、表現する技術を会得していきます。 |
工芸 | 陶、ガラス、金属などの素材を加工し表現する技法を学びます。地域に根付く日本古来の伝統工芸品を学んだり、継承者育成も行います。 |
建築 | 建物を設計するだけの技術者はどこでも育成できますが、美大ではより美的価値の高い建物を設計・デザインできる建築家を育成します。 |
先端芸術表現 | 絵画、写真、映像などの美術領域に加え、身体、音楽、コンピューターなど様々な表現の基礎を学び、最先端のクリエーターを育成します。 |
芸術学 | 実技を通して表現技法や素材への認識を高め、展覧会やメディア企画などの実践を通して美術・芸術を世界に発信する人材を育成します。 |
グラフィックデザイン | デザインを通して情報を「伝える力」を身につけた人材を育成する。造形力・描写力の育成、写真やコンピューターの利用なども学びます。 |
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プロダクトデザイン | 人々の生活を支えるあらゆる商品・パッケージをデザインする分野。機能や形、生産・製造の知識など多くの観点を学ぶ必要があります。 |
テキスタイルデザイン | テキスタイルとは布地のこと。日本に根付く手業の染色技法から、デジタルテクノロジーを駆使した表現まで、布に関して幅広く学びます。 |
環境デザイン | インテリア、住宅、店舗、公園、都市など、人間が暮らす空間全体を設計・デザインします。建築より大きな視野で物事を考えていきます。 |
情報デザイン | 生活の中にあふれる無数の情報を的確に伝えるため、CGや映像などのメディア制作、プログラミング、ウェブデザインなどを学びます。 |
視覚伝達デザイン | 人に思いを伝えるため、感性を磨き、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚を駆使して様々な形でメッセージを伝える力を身につける学部です。 |
これらに加え、近年「COOLJAPAN」が注目されているといった背景から、アニメーションやマンガを題材に学ぶ学問を設置している大学も増えてきました。今後も、日本のコンテンツの成長に合わせて美大芸大には様々な学部が誕生していくことでしょう。
アートの範囲が時代と共に広がりを見せる中、東京藝術大学では2019年4月にゲームの研究を行なう専門コースの設立を発表しました。芸術大学でゲームを専門的に学べる国公立はこれまでになく、東京藝術大学の試みに注目が集まっています。
大学院映像研究科の中に設立されるゲームコース。アニメーション専攻・メディア映像専攻から各学年2人ずつが学べる、狭き門です。
CGグラフィックの進化が目覚ましいゲーム業界ですが、日本藝術大学のゲームコースではアナログゲームも学びます。ゲームに関する幅広い講義・演習を経て、修了研究でゲームを制作。
講師にはドラクエやFFを開発してきたスクウェア・エニックスのクリエイターが務め、産学共同の取り組みとして表現の新たな可能性を追求していきます。
新学科設立を前に、2018年には東京藝術大学院修了生の5人が「第0年次」のディレクターとなってコンテンツを制作しました。その成果を、11月3・4日に発表。内覧会では、海外から来日した准教授や学生も参加した講評会が行われ、ディレクターや指導にあたったメンター、エンジニアなど、各々の立場から作品を解説しました。
美術大学は美術・芸術に関する大学なだけあって、作品を作るための施設や設備が充実しています。アトリエを利用して自由に制作活動ができ、専門知識を教授から学ぶことも可能です。
デッサンを独学する場合は、自分で石膏像をいくつも用意したり、モデルを雇ったりする必要があり、あまり現実的とはいえません。しかし美大であれば、必要な道具が一通りそろっています。また、画材や道具の使い方を基礎から学べるというのもメリットと言えるでしょう。
美大に入学することで自分の作品の講評を受けられます。多数の人から意見を取り入れることができますし、作品の傾向を知るきっかけにもなります。ほかの学生の作品を観て自分の作品と比較できる機会も多いため、自分の作品を客観視できる力が身に付きます。
美術大学に入学した学生たちは、何か目標を持って入ってきた人ばかりです。努力を続けてきた人たちが集まっているので、刺激を受ける機会が多くなり、自分の成長にもつながることでしょう。
美術大学では、その道のプロから技術を学ぶ機会があります。美大に進学しなければそういったプロから教えを受ける機会というのはそう多くはありません。また、美大には芸術や美術の仕事が集まるので、そこで働く人との繋がりを作るチャンスもめぐってきます。美大で人脈づくりをするということは、その後美術の世界で活動するにあたって大きな力となります。
美術大学では毎年秋になると多くの大学で学祭が開催されます。美術・芸術系の大学で行われる学祭は芸祭と呼ばれ、大きいものでは地域ぐるみの盛り上がりを見せるものも。芸祭では仲間と一緒に協力して大規模な作品作りや企画を行うため、社会人に必要なチームワークやコミュニケーション能力を身につけることができます。
また、芸祭は一般の方に自分たちの芸術作品をアピールできる場でもあります。多くの生徒が集まってそれぞれ企画や展示を行い一つの大きな作品を作るということは、着実に自分の成長へと繋がりますよ。
美術大学ではテーマを与えられて、それをもとに作品を作るということを繰り返し行います。そうすることで身につけられるのが、形のないものを形にする力です。例えば、会社で会議を行う時、言葉でやり取りを行いますがそれは何かを成すためにおこなわれます。その際、言葉という抽象的なものだけでなく具体的なものを掲示できれば会議の判断材料になります。
また、単純にモノを作るということができるようになります。技術的なものは練習が必要でしょうが、絵画や工芸などで学んだことや経験は必ずモノづくりに活かすことができるでしょう。