ギリシャ美術

ギリシャ美術とは

ギリシャ美術は紀元前700年ごろにギリシャ地方に登場した西洋美術です。彫刻や絵画建築をはじめ、その後の西洋美術史の基礎が培われました。「ドーリア式」や「イオニア式」、「コリントス式」の3つの型に分かれた建築が特徴的。この時期に「パルテノン神殿」も建築されています。

また、「壺絵」という絵画も生まれ、食器に人物画やパターンをデザインする文化が流行しました。黒像式と赤像式の2つがあります。さらに、彫刻も著しく進化。エーゲ芸術とは異なり、リアルな描写が施された男性の裸増が登場。この像は「クーロス」と称され親しまれました。

なお、ギリシャ美術は「アルカイック期」、「クラシック期」、「ヘレニズム期」の3つの時代に分かれています。以下で各時代の特徴について紹介します。

アルカイック期

アルカイック期はギリシャ美術の初期であり、「アルカイック・スマイル」が特徴。「アルカイック・スマイル」という呼び名がついたのは、この時期に作られた彫刻が軽く微笑んでいたからです。少し左足を前に出し、左右均等に体重がかかる体の構図も特徴の一つ。

日本の飛鳥時代に作られた仏像にもアルカイック期の彫刻に似た特徴があり、微笑みは生命力を表しています。裸体男性立像は、「クーロス」、着衣女性立像は「コレー」と呼ばれ、クーロスは青年、コレーは女性という意味です。

クラシック期

クラシック期はアルカイック期の次に登場し、「コントラポスト」とい対置手法が編み出された時期です。コントラポストとは左右どちらかの足に体重をかけたポーズであり、人間として自然なポーズを極めたところたどり着きました。

コントラポストの登場で彫刻の自由度がぐっと上がり、手や顔に表情が加えられただけでなく、衣類にひだができるなど、動きが見受けられるようになりました。筋肉の動きも彫刻で表現されるようになり、美しい筋肉がギリシャ彫刻の特徴に。脂肪のついた肉体が描かれていないのは、当時「スパルタ」という兵役が7歳から課されていたためです。青年たちは鍛えられ、皆筋肉質な身体つきをしていました。古代オリンピックが開催されたのもこの時期からで、競技参加者は全員裸だったそうです。

古代オリンピックは神に捧げるために催される大会であり、美しい肉体を備えた美男子の姿が神を喜ばせると信じられていました。とはいえ、ギリシャ彫刻は忠実に肉体を再現していたわけではなく、実際よりも少し盛っています。青年たちが憧れる肉体が描かれていたといえるでしょう。

ヘレニズム期

この時期、アジアやエジプト、メソポタミア辺りをマケドニアのアレクサンドロス大王が支配します。これによりギリシャ地方は豊かになり、ギリシャ文化は世界中に広まっていきました。すると、芸術は大衆のものになり、作品は神のためではなく王のために作られように変化し始めます。

アレクサンドロス大王に捧げるのをモチベーションに作品が作られているのがヘレニズム期の特徴であり、「前から見ること」を重視されています。クラシック期よりも体の曲線や衣類の曲線が華美になり、前後左右どこからでも美しく見えるよう、配慮して作られました。

ギリシャ美術の代表作

ギリシャ美術の代表作は、パルテノン神殿をはじめ「ミロのヴィーナス」や「ラオコーン」、「サモトラケのニケ」など多岐に渡ります。各時期によって作品の特徴が異なり、アルカイック期の作品には大型の大理石立像や、原幾何学様式を施した陶器が作られました。

そしてクラシック期はパルテノン神殿が作られた時期であり、コントラポストにより自然主義的な表現が発展。一方でヘレニズム期は「公で感情を顕わにするのは野蛮」という考えのもと、表情があまり描かれなくなりました。その分注力されたのがコントラポストの極端化であり、ギリシャ文化とオリエント文化とが融合して生まれた文化が反映されています。

ギリシャ美術のモチーフ

ギリシャ人にとって人間は神から授けられた姿であり、美しい身体は神々を喜ばせると考えていました。美しいのは善いこととされ、特に男性が美しくあることは徳を積むことに等しく、肉体の美しさを追求することが立派な人間になる上で欠かせませんでした。そのような背景があり、ギリシャ美術のモチーフの多くは「裸」なのです。