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静物デッサンの定番モチーフの1つであるりんご。学校の美術の授業でりんごをデッサンしたことがある、またはりんごをモチーフとしたデッサンを目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。ここでは、りんごがデッサンのモチーフに多く選ばれている理由をはじめ、りんごをデッサンするメリットや上手にデッサンするためのコツをご紹介します。
りんごがデッサンのモチーフに選ばれる理由の1つが、「手に入れやすい」こと。近くのスーパーや八百屋、コンビニなどで季節を問わずに手に入れられるので、自宅で気軽にデッサンの練習に取り組むことができます。また、りんごは多くの人に親しまれている果物の1つということもあり、石膏像より取っ付きやすい点もデッサンのモチーフによく使われる理由と言えるでしょう。
りんごは球体のように見えて、よく観察するとほどよい凸凹があり、色彩の明度の違いや皮の独特な模様など、表現力を求められる奥の深いモチーフです。同じ球体でも均質なカタチの石膏モチーフと比べて、自然物のりんごは形に個体差があり、特徴を捉える観察力や表現力を鍛えるトレーニングにもなります。
りんごはデッサンだけでなく、セザンヌやピカソなどといった巨匠の作品でも描かれているモチーフです。日本でも人気の高い印象派の画家の1人であるセザンヌは、「りんごひとつでパリを驚かせてみせる」とりんごをモチーフとした作品を多く残していることで有名。このようにりんごは多くの画家からモチーフに選ばれてきた歴史があり、さまざまな画家の作品を参考にすることで表現の幅が広がるきっかけになるかもしれません。
りんごはデッサンをするうえで必要な表現の「明暗」「固有色」「質感」「量感」などが微細な表情で見えていることから、りんごをきちんと表現できればほとんどのモチーフを攻略できると言われています。また、りんご特有の凸凹とした形状の描き分けや立体の描き起こし方を理解することで、同じく細かい凸凹がある人物画の頭部も表現できるメリットがあります。
デッサンの基本がぎっしりと詰まっていることも、りんごがデッサンのモチーフとして選ばれる理由の1つです。
デッサンを描き出す前に、まずはモチーフとなるりんごをよく観察しましょう。デッサンで大切なのは、よく見て描く描写力です。そのため、どんな形をしているのか上や横、下からなどさまざまな方向から観察し、凸凹の部分や傷の有無、皮の模様など、モチーフの特徴や構造を理解することがりんごを上手くデッサンするうえで重要な要素になります。
りんごを置く際も、特徴が分かるように配置するのがポイント。りんごの見せどころとなるへたの部分やくぼみ部分、模様などの特徴をつかめる構図にすると、初心者でも描きやすくなります。
りんごを描くうえで一番のポイントとなるのが、りんごの上部となるヘタの周辺部分です。ヘタ周辺は形の変化が多く、ほかの部分よりも描き込みに力を入れたい部分になります。
また、人間の目はありのままを見ているようで勝手に認識する機能が備わっており、ぱっと見の印象に左右されやすいと言われています。そのため、りんご上部の凹んだ部分を上手く表現できれば、見る側が本物に近い胴体部分の形を推測しやすくなり、よりリアリティのある絵のように見せることができるのです。
鉛筆デッサンで立体感や質感を表現したい人は、こする技法を試してみましょう。ティッシュや布、指の腹などを使って絵の表面をこすることで、輪郭に奥行きを持たせたり鈍い印象を持たせたりすることができ、立体感や質感を表現できます。ただし、全体をこすってしまうと目立たせたい部分までぼんやりとしてしまうため、どこをこすれば立体感や質感をより表現できるのかを意識しながら取り入れてみましょう。
りんごの色を鉛筆の濃淡でどのように表現すればいいのか分からないという場合は、スマートフォンやデジタルカメラなどの機能を使ってモノクロ撮影してみるのもおすすめです。モノクロに置き換えることで明暗が判断しやすく、どのくらいの濃さで描けば良いのかのイメージ材料になります。
鉛筆の動かし方をはじめ、上部の凸凹や底面の陰影の表現、明暗の最終的な仕上げなどを上達させたいという方は、デッサンが上手な人の描き方を実際に見せてもらうのも良い勉強になります。また、動画サイトにもりんごのデッサンの描き方を解説した動画があがっているため、参考にしてみるのも良いでしょう。