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1940年代から1960年代にかけて、アメリカのニューヨークを中心に広まった芸術運動です。
アメリカの雑誌「ザ・ニューヨーカー」でワシリーカンディンスキーの作品に「抽象表現主義」という言葉が用いられて紹介されたことがはじまりと言われています。
抽象表現主義は具体的なモチーフを持たず、巨大なキャンバスに感情を表現するスタイルが特徴。キャンバスは「画家の描画行為の痕跡=フィールドである」と考えるスタイルで、感情や感覚を絵の具で表現します。
創作過程が重視される、ダイナミックな動きを伴う表現方法として発展していきました。
抽象表現主義が生まれた時代は、まさに第二次世界大戦の最中でした、ヨーロッパの都市の多くが廃墟と化した一方で、アメリカ本土はさほど被害を受けることはありませんでした。
世界の芸術の中心はフランス・パリからニューヨークへ移り、新進気鋭の画家たちの多くもアメリカへ渡ります。
ヨーロッパ出身の芸術家たちにとって、伝統も歴史も浅いアメリカは、自由な思想や精神で自在に芸術を表現する場だったのです。
その後、抽象表現主義はアメリカで生まれた独自の芸術表現として、戦後の人々を魅了していきました。
抽象表現主義では、多くの手法で画家の感情が表現されます。
無秩序に絵の具が散りばめられたかのように、キャンバスに絵の具を飛び散らせたり垂らしたり汚し付けたりするような手法で作品を完成させる「アクション・ペインティング」や「ドリップ・ペインティング」など、手先で絵の具を丁寧に塗って完成させる絵画ではなく、体全体を使ってダイナミックに制作されます。
枠をはみ出すような画法も多く見られたことから、ヨーロッパでは「アメリカン・スケール」とも呼ばれました。
アクション・ペインティングの技法を確立させたジャクソン・ポロック。彼の代表作には「ソース」や「五尋の深み」、「No. 5, 1948」があります。
バーネット・ニューマンは1色に塗られた画面に「zip」と名付けた垂直線を配する作風で知られていて、カラー・フィールド・ペインティングと呼ばれるスタイルを確立しました。「Onement, I」や「CantoXV」「野生」など、多くの作品を生み出しています。
オランダ出身の画家ウィレム・デ・クーニングは、ピカソの影響を受けた抽象的な作風が有名で、女性シリーズで作品が評価されました。