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表現主義とは、第一次世界大戦前や大戦中に流行した、絵画や詩、建築を中心とした近代的な芸術運動のひとつです。
主観的な視点から世界を捉えながら、感情的な表現を伝えるために形態をあえてゆがめているのが特徴で、ワイマール共和国時代のドイツやベルリンなど北欧で広く普及しました。
写真のような現実ではなく、作家の感情的な表現を観ている側に伝えようとしています。
写実主義・自然主義や印象派などの芸術様式に対する反動として登場した抽象的な表現で、1940年代後半から1690年代にかけてアメリカで登場した「抽象表現主義」にも影響を与えました。
表現主義は、画家自身の心の中の世界を表現しているのが特徴です。目に見える世界を描くこれまでの美術とは大きく異なりました。
そのため、目に見えない人の内面や感情、精神的なものを人や物に例えて強調する「象徴主義」を指す場合もあります。
そのため、広義的にはポスト印象派のゴッホやムンクなど、画家自身の心情を表した絵画も「表現主義」と言われることがあります。
表現主義や象徴主義と同じ時代には、目に見える外側の世界だけを描いた「印象派」も存在していて、双方は対照的な動きをしていました。
表現主義には、北ドイツの「ブリュッケ」グループと、南ドイツのミュンヘンを拠点とする「青騎士」の2グループがありました。
ブリュッケは「橋」という意味で、未来の「架け橋」となるような芸術を創造するという理念を持つ芸術家たちが参加していました。
表現主義が起こった1914年~1918年は、第一次世界大戦が起きるなど、混迷の時期にありました。
そんな世の中に警鐘を鳴らそうとする、画家たちの社会意識が作品に反映されているのが特徴です。
一方、青騎士グループは、素人のような訓練を受けているわけではない人の絵(プリミティブ芸術)や子供の描く絵に対して関心が高く、動物と自然との連鎖などを感じさせる作品が多く見られます。
表現主義のブリュッケの代表作にはキルヒナーの「モーリッツブルクの水浴者たち」があります。青騎士の代表作は、フランツ・マルクの「青い馬」や「動物の運命」が有名です。
また、抽象主義としても知られるムンクの「叫び」は、絵画を見る人の感情や本能に訴えることから、表現主義の代表作としても挙げられることがあります。ムンクの作品は芸術界だけでなく、心理研究の分野にも影響を与えました。