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木版画はもとよりエッチング、ドライポイント、シルクスクリーン、リトグラフなどの手法で表現する芸術家。ここでは、版画家の仕事内容から、年収、向いている人、スキル、学校選びなどについてご紹介します。
江戸時代の浮世絵作家や昭和の名人である棟方志功が有名。端的に言えば、木や銅、石、アルミなどの板版に彫刻などの細工を施し、絵具やインクなどの色素を転写や透写などの手法で絵画として仕上げていく芸術家が版画家になります。
絵画などと同じく芸術作品として制作される場合はもとより、例えば絵本やイラストレーションの原画、広告のビジュアル、本の表紙や挿絵など商業的な用途に用いられるケースも多く見られます。そうした商業用途の場合はデザイナーやアートディレクター、イラストレーター、装丁家といったその道の専門家の依頼を受け、共同で制作するというスタイルになります。
忌憚なく言ってしまいますと、版画家として専業で生計を立てているという人はごく稀で、多くの場合、美術教師や専門学校、カルチャーセンターなどの講師、あるいは絵本作家やイラストレーターなどの職業と兼業しているというのが実情。芸術系と関係ない職業に就きながら、並行して版画家として活動しているというケースも珍しくありません。
また版画作品の価格にも大きな幅があり、人気作品であれば数十万円から数百万円ということもありえますが、一般的には一点あたり数万円程度というのが実情です。それゆえ、多くの場合は他の仕事と兼業しながら、というやり方となります。
版画というものは他の芸術作品に比べ、完成するまでより長い時間と多くの手間を必要とします。忍耐力や持続力、体力などが他の芸術家以上に求められます。手先が器用で、細かな作業が苦にならないというのも重要な資質と言えるでしょう。
その上で、他の芸術家と同じく、観察力や発想力、独創性、デッサン力の他、デザイナーやアートディレクターと共同で作業することもありますので、コミュニケーション能力も求められます。
版画家になるのに必ずしも学歴は必須ではありませんが、美術系大学に進み、美術に関する幅広い知識を身につけながら、版画制作に関する知識や技量を高めていくというのが王道と言えるでしょう。
美術系大学の入試では、筆記試験以外にもデッサンや専攻別の課題が出題されるので、その対策として、美大専門の予備校やスクールに通うことが望ましいと言えます。
版画家という職業に資格や免許というものはなく、それこそ自分で版画家だと言えば、版画家ということになります。しかし、版画家専業で生計を立てるのは決して簡単ではないため、美術教師の資格を取得しておくのは、収入の安定という面で有効と言えます。
また「日展」や「二科展」、「院展」などに入選すると開催団体の会員資格を得ることができ、プロの版画家としての活動の幅が広がる期待が持てます。